質問
通行料の支払義務はあるのか?
回答
しかし、実際には2項道路として指定さている私道について通行料を支払った上で通行許諾を得ている例が少なからずあると推測されます。
通行を禁じられないこと通行権があるとは別物
一般の方には分かりにくいかもしれませんが、法律上、私道所有者が他人の通行を禁じることができないということと、第三者が私道を通行する権利があるということは似て非なるものなのです。この二つは何のトラブルもなく私道を通行できている間は特に差は現れないのですが、通行を妨害された場合に大きな違いとなって現れます。
トラブルが起きた場合に当事者での話し合いがつかなければ最後は裁判所に訴えるということになりますが、通行妨害に対して裁判所に救済を求めるためには、訴える側が通行する権利を持っていることが必要なのです。なぜかというと裁判所は国民が権利を害されたときにそれを保護・回復することを役目としているためだからです。
そのため、通行する権利が必須となります。
2項道路の指定は通行権をあたえるものではない
私道が2項道路に指定されると、その私道所有者はその私道部分を道路として一般公衆に提供する義務を負います。つまり、私道所有者は一般公衆の通行を禁じることが出来なくなります。
しかし、2項道路としての指定は所有者以外の誰かにその私道を通行する権利まで取得させるということまでは認めていません。したがって、私道所有者が通行を妨害したとしても他人の権利を侵害したことにはならないのです。
そのため、通行を妨害された側は非常に困難な立場に立たされます。自己の権利を侵害されたわけではないため裁判所に救済を求めることは出来ません。そのため、通行を諦めるか、妨害を甘受しながら何とか通行したり、行政に対して妨害を止めさせるよう私道所有者を指導してくれと陳情するくらいしか対応策がないのが現実です。
通行を妨害するため置かれた花壇だとかバリケードとかを勝手に動かせば、その所有者から所有権侵害だといって訴えられる可能性もあります。
他にも違いがある
また、一般公衆の通行を禁じることができないとは、徒歩での通行を禁じることができないというだけであり、自動車、バイク、自転車での通行も禁じられないというものではありません。道路の状況にもよりますが、自動車での通行を禁止することは認められる場合も出てきます。
通行権は断然あった方がよい
他方、通行料を払ったり、無償でも話し合い上で通行許諾を得られれば、通行権を取得したといえます(その他にも囲繞地通行権や慣習上の通行権、判例上の通行権などを根拠に通行権を取得する場合があります)。通行権を有する場合は、通行を妨害されれば自分の権利を害されたといえ、裁判所に対して救済を求めることが可能になりますので、妨害の停止や損害賠償を求めることも可能となります。
また、通行料の支払いに際して自動車での通行も含むものとすれば、自動車での通行も通行権の内容となり、自動車での通行を妨害されれば裁判所に救済を求めることも可能となります。
さらに、今後不動産を売りたいといった場合には、不動産業者から私道の通行許諾書を取得するよう求められます(ライフライン設置のための私道掘削許諾もともに求めら得ることが多いです)。売買したいタイミングで、すぐに私道所有者が通行許諾書に署名押印をしてくれればよいですが、話し合いがこじれてしまい通行許諾が得られないと売買がストップして不動産の売却を断念せざるを得ない状態になりかねません。
通行料の請求はチャンスでもある
2項道路に指定されている道について通行料を請求されることは腹立たしい気持ちもあるかもしれません(2項道路としての指定されていることにより私道所有者も建物が建てられたり私道部分の固定資産税が賦課されないなどのメリットを享受していることが多いことからすれば、払いたくない気持ちは理解できます。)。しかし、見方を変えれば、対価を払えば権利(通行権)を取得できるチャンスでもあります。通行権が有るか無いかはその私道に面している建物の価値に大きな影響を与えます。
通行料の支払いを求められても頭から拒否せず、金額次第ですが、検討してみる価値はあります。
なお、通行料は家賃のように月払いとすることも可能ですが、多くの場合、ある程度まとまったお金で一回支払というケースが多いかと思います。