相続放棄の流れ
ご本人で相続放棄の手続きをする場合の流れです。
細かなポイントまで解説しています。
相続放棄手続きをご自身でやりたいという方は是非ご覧ください。
なお、当事務所にご依頼いただく場合は、これらの準備や諸手続きはすべて当事務所で行います。
1.準備
まず、相続放棄の申述書の作成に必要な書類(戸籍謄本等)を集めます。
戸籍謄本は本籍地の所在する市町村役場の(戸籍住民課など)で管理していますので、直接、窓口まで出向くか郵送で取り寄せます。
書類の取り寄せは思いの外時間がかかりますので、余裕を持って行ってください。
<費用>
(市町村により違いがありますのでHPや電話で予め確認してください)
戸籍の付票の写し:300円
戸籍謄本:450円
除籍謄本:750円
改製原戸籍:750円
(H28.4時点)
郵送での取り寄せの場合は、ホームページからダウンロードした請求用紙に必要事項を記載して請求します。ダウンロードができないなど請求用紙を入手できない場合は、市町村の窓口に電話で記載事項を確認の上、便せんなどに手書きで必要な事項を記載されても申請可能です。
発行手数料の支払については通常は郵便小為替(郵便局の郵貯窓口で取り扱っています)が利用されます。
請求用紙、免許証・健康保険証のコピー、返信用封筒とともに所定の額の郵便小為替を同封して請求してください。
1.被相続人(亡くなった方)の戸籍(除籍)の付票又は住民票の除票
(被相続人の最期の住所地を調査し、管轄を確認するためです。)
→どちらか一方が必ず必要です。
2.相続放棄する人の戸籍謄本
(被相続人との関係を証明するために必要となります。)
→必ず必要です。
3.被相続人と申述者との関係が分かる戸籍(除籍)謄本
さらに、申述者と被相続人との関係にしたがい、以下の戸籍(除籍)謄本が必要になります。被相続人との関係が離れるにつれ必要な戸籍謄本等が増えていきます。
- -被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本
※自己の戸籍謄本には配偶者の記載がありますので、申述者が配偶者の場合や子であっても同じ戸籍にいる場合には、「2.相続放棄する人の戸籍謄本」が1通あれば足ります。
- -被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- -子(被代襲者)の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- -被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍)謄本
- (被相続人に子がいたが既に死亡している場合には、その子の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍)謄本)
- -被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍)謄本
- -父母の死亡の記載のある<b戸籍(除籍)謄本
- (被相続人に子がいたが既に死亡している場合には、その子の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍)謄本)
- -被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍)謄本
- -父母の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- (被相続人に子がいたが既に死亡している場合には、その子の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍)謄本)
- -被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍(除籍)謄本
- -父母の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- -兄弟姉妹の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
- (被相続人に子がいたが既に死亡している場合には、その子の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍)謄本)
なお、相続放棄手続きは各相続人がそれぞれが個別に行うものですので、例えば妻、子が相続放棄手続きをする場合は、原則として書類も2セット分用意することとなります。ただし、同順位者の複数(妻と子や兄弟)が同時に申述する際は、重複(共通)する戸籍等は1通提出すれば足ります。また、地域の裁判所によっては先に申述した者の書類があれば再度の提出は不要としている場合もあります。
注意:相続放棄の熟慮期間(3か月)の末日が迫っている場合は,全ての添付書類がそろっていなくても,申述書とその時点でそろえられた添付書類を先に提出して受付手続をすませてください。足りない書類は後から提出することで対応可能です。
2.相続放棄申述書に必要事項を記入します。
相続放棄申述書のひな形は家庭裁判所に備え付けてありますので、それを利用しても良いですし、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
市販されている相続に関する本に付いている書式をコピーして利用しても問題ありません。
申述書の書き方サンプル
(1頁目 ・ 2頁目)
原則として放棄する人ごとに申述書を作成します。
なお、同順位の相続人の場合は、連名で1通の申述書に記載することも可能です。但しその場合でも各自の捺印が必要になりますし、予納切手や貼付する印紙も800円×人数分必要となります。
(裁判所HPで配布されている書式では一名用であるため、連名で申述を行うにはご自身で申述書を一から作成する必要があります。手数料等が変わらないことを考えれば敢えて連名で申述書を作成する必要はないかと思います。)
3.申立て費用
・収入印紙800円(申述書に貼付します)
・予納郵便切手
(具体的な額は地域の家庭裁判所ごとに必要額が異なりますので、事前に電話で確認して下さい。)
4.相続放棄申述書の提出
家庭裁判所宛に申述書と戸籍等の必要書類を提出します。
提出する家庭裁判所は亡くなった方の最期の住所地を管轄する家庭裁判所です。
最期の住所地がどこかは戸籍の付票か住民票の除票に記載してあります。
家庭裁判所の管轄は家庭裁判所のホームページに掲載されています。
相続放棄申述書の提出は郵送、持参いずれでも大丈夫です。
なお、直接家庭裁判所に申述書等を持参される場合は、印鑑(認印でよいです)と身分証明書(運転免許証・保険証)を忘れずに持参してください。
5.照会書の送付
相続放棄の申述書の提出後、通常1週間から2週間程度で家庭裁判所より「照会書」という書類が送られてきます。
「照会書」とは、家庭裁判所の裁判官が相続放棄についての意思確認と状況確認するため書類で、裁判所からの質問事項が記載されています。
東京家裁の場合ですと以下の質問があります(それぞれの事情によって異なる場合があります)。
・いつころ被相続人の死亡を知ったのか
・相続放棄の申述は自分で行ったのか否か
・相続放棄の申述は自分の意思に基づくか
・相続放棄をする具体的な理由
・遺産の一部を処分したことがあるか、仮にあれば具体的な説明
この「照会書」に質問に対する回答を記入して家庭裁判所に返送又は持参します。
6.相続放棄申述への結果通知
相続放棄申述が形式的にも内容的にも問題がない場合は「相続放棄申述受理通知書」が家庭裁判所から送付されます。
概ね、申述書の提出から1ヶ月程度が目安です。
相続放棄の手続きはこれで終了となります。
なお、3ヶ月間の熟慮期間がすでに経過している、又はすでに単純承認済みと判断されると、申述申立書を受理しないとして申述が却下されることもあります。
その場合は、通知を受け取った日から2週間以内に高等裁判所へ即時抗告という手続きをとることになります。
7.相続放棄受理証明書の発行
通常、相続放棄受理通知書に「相続放棄受理証明書の発行を希望する方は、別途手続きしてください」との記載があります。相続放棄受理証明書とは法務局など官公庁に相続放棄が成立したことを証明する時に必要な書類です。
金融機関などに相続放棄したことを知らせるには、わざわざ「相続放棄受理証明書」の発行を受けなくても、相続放棄受理通知書をコピーして送付すれば足ります。
8.相続放棄後の注意点
人が亡くなると遺品の整理は避けて通れませんが、相続放棄をする、又は相続放棄をした後の遺品の整理は注意が必要です。
相続放棄をした人は、次順位の相続人が遺産の管理を始めるまでは遺品を管理しておく義務があります(民法940条)。そのため、遺産には手を付けてはいけませんし、勝手に捨てたりしてもいけません。ただし、ゴミまで管理しておくというのもおかしな話しです。
一般論としては、市場価値のない物(換金できない物)でしたら処分してしまっても相続放棄には影響はありません。
しかし、物によっては判断が難しい場合もありますので、迷われたら専門家にご相談されることをお勧めします。