遺産分割協議

遺産分割協議のすすめかた

人が死亡すると相続が始まります。

たいていは、四十九日法要が終わったころ、そろそろ相続手続きもしようかという流れになることが多いようです。遺言書があれば遺言書の内容に従って遺産を分割することになりますが、遺言が無ければ話し合いで分けることになります。

弁護士等の専門家を入れるのが確実ですが、さほど遺産もないしわざわざ弁護士に依頼するほどでもないので自分たちでやろうと考えられた方も多いと思います。でも、話し合いって何をどうすればいいのかよく分からない方も多いと思います。そんな方は、一読ください。

遺産分割協議の流れは以下のとおりです。

   1.相続人の範囲の確定

   2. 遺産の内容(範囲・評価額)の確定

 3.全相続人間での話し合い

 4.法定相続分の確定

   5.特別受益・寄与分

   6.遺産分割協議書の作成

   7.相続財産名義変更・登記手続など

なお、当事務所に依頼された場合、相続人の範囲確定のための戸籍の収集、分割方法のアドバイス、遺産分割協議書の作成を行います。

 

以下、ご自身で遺産分割協議を作成する場合の一連の流れについて、説明致します。

 

1.相続人の範囲の確定

遺産分割協議書の作成は全相続人の合意が必要となります。もし相続人が一人でも漏れていると遺産分割協議が無効となります。逆に、相続人ではない人が加わり署名押印しても無効となります。
相続人の範囲の確定は被相続人の戸籍を取り寄せてしっかり確認してください。決しておろそかにしてはいけません。

相続人となるのは以下の人です。

1 配偶者(存命の場合常に相続人です)

2 

ただし、子がいない場合 

さらに、子もおらず・親と死亡している場合 兄弟

被相続人の前妻(前夫)との間に子がいればその子も相続人となります。

婚外子であっても認知していれば相続人となります。
さらには養子縁組をしている場合には養子も相続人となります。
なお、相続人がすでに死亡している場合にはその子が代わりに相続人になります(代襲相続)。

以上のとおり、意外なところから相続人がいたりします。相続人全員を明らかにするため、被相続人が生まれてから死亡に至るまでの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本を取得する必要があります。

代襲相続が生じている場合や兄弟姉妹が相続人になる場合では、何通もの戸籍謄本などを取得しなければならないこともあります。

なお、相続人の中に未成年者がいる場合、未成年者は遺産分割協議に参加することはできません。また、痴呆症などで正常な判断が難しい人も協議に参加することは避けるべきです。
未成年者がいる場合には親が親権者として未成年者を代理して遺産分割協議を行います。ただし、親も相続人である場合には両方の立場を兼ねることはできないため、家庭裁判所に対して未成年のための特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
また、知的障害や痴呆症を患っている人がいる場合は成年後見人が選任申立を行い、成年後見人が遺産分割協議の話し合いに参加ることになります。

 

2.遺産の内容(範囲・評価額)の確定

財産のリストアップ

遺産分割の対象となる遺産とは、相続開始時に存在し、かつ、分割時にも存在する、未分割の遺産です。

具体的には以下のものが挙げられます。

ア)不動産

イ)借地権、建物賃借権

ウ)預貯金

エ)現金

オ)有価証券(株式、国債、社債、投資信託など)

カ)無体財産権(著作権、特許権、商標権など)

キ)動産(貴金属、美術品、骨董品)

これら財産をリストアップしていく作業を行います。

仮に、リスト漏れや遺産分割協議後に新たに見つかった財産があった場合は、その財産についてだけ新たに遺産分割協議をすることになります。やり直しにはなりません。

なお、財産のうち、預貯金は法律上可分債権とされ相続の開始とともに当然に分割されて法定相続分に応じて各相続人に帰属すると考えられています。そのため法律上は分割済みとされ、あらためての遺産分割協議は不要となります。しかし、銀行などの金融機関で預金の払い戻しを受けるには、窓口で遺産分割協議書や銀行所定の様式による相続人全員の実印の押印がある届出書の提出を求められるため、ほとんどの場合、遺産分割協議の対象とすると考えられます。

マイナスの財産

上記はプラスの財産でしたが、マイナスの財産すなわち借金はどうでしょうか?

借金や未払金(入院費など)などの金銭債務(借金、保証債務など)は、各相続人へその法定相続分割合にしたがって分割されて引き継がれます。そのため、法律上は遺産分割協議の対象とはなりません。

もっとも、実際の遺産分割の場面では、プラスの財産で被相続人の借金や未払金を支払い、残った財産を相続人で分割するという手続きがとられることが多いです。

また、葬儀に要した費用埋葬費用などは被相続人の債務ではありませんが、全員の合意あれば、遺産分割協議にて被相続人の相続財産から支払うという取り決めも可能です。

なお、負債を特定の人だけが負担するという合意をしても、債務を免れることはできません。債権者から支払い請求があれば法定相続分の範囲で支払義務があります。
もし、債務を相続したくないのであれば、相続放棄をする必要があります。

 

3.法定相続分の確定

遺産の分割については当事者の合意が優先されます。後述のとおり、民法では法定相続分という規定があり、各相続人が相続できる割合が決められていますが、これはあくまで任意規定であって相続人全員で法定相続分と異なる遺産分割を決めることが可能です。たとえば、特定の相続人にすべての遺産を集中させたり、特定の相続人は一切相続をしないという協議も可能です。なお、遺産分割協議で遺産をもらわないと決めても借金を引き継がないことにはならないため注意が必要です。遺産をもらわない代わりに借金も引き継がないのであれば相続放棄の手続きをしておくことが安全です。

もっとも、当事者間で話をするにあたっては法定相続分を基準に話し合いをすることが多いと思われます。

相続人が2名以上いる場合、各相続人の相続分は民法により定められています。

配偶者、及び子(または、直系尊属、兄弟姉妹)がともに相続人になるときの相続分は次のとおりです。

法定相続人        法定相続分

配偶者、子        配偶者、子が2分の1ずつ

配偶者、直系尊属          配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1

配偶者、兄弟姉妹          配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1

相続人である子(または、直系尊属、兄弟姉妹)が2人以上いるときは、それぞれの法定相続分を等分します。たとえば、配偶者と子2人が法定相続人ならば、法定相続分は配偶者が2分の1、子が2分の1を等分したそれぞれ4分の1ずつとなります。

ただし、被相続人の兄弟姉妹が相続人である場合、被相続人と父母のいずれかが異なる兄弟姉妹(いわゆる半血兄弟)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の半分とされています(民法第900条4項)。そのため、配偶者と子2人(全血1名、半血1名)が法定相続人なら、子は6分の2と6分の1づつとなります。

なお、平成25年の最高裁判決とそれを受けた同年の民法改正により、嫡出子と非嫡出子との区別は無くなりましたので注意が必要です。

相続人がすでに死亡しその子に代襲相続が生じている場合、代襲相続人は被代襲者の相続分をそのまま引き継ぎます。たとえば、被代襲者(相続分は2分の1)の、2人の子たちが代襲相続人であったならば、それぞれの相続分は遺産全体の4分の1ずつとなります。

 

4.特別受益・寄与分

各相続人の法定相続分を修正するものとして、寄与分特別受益があります。

この特別受益・寄与分のいずれも法的相続分の規定と同様に任意規定ですので、相続人全員の合意があれば、特別受益・寄与分を一切考慮しないとか、法律で規定される額より増減して各相続人の相続分に反映させることが可能です。

・寄与分

寄与分とは、被相続人の財産の維持または増加について、特別の貢献をした人に対し、本来の法定相続分を超える相続分を与えようとするものです。具体的に金額として○○円と定める方法や遺産総額の○○%と規定します。もっとも、遺産分割は合意があれば各人の相続分は自由に決められますので、各人の相続分を決めるにあたり寄与分を織り込み、特に寄与分を明示しないことがほとんどです。

寄与分が認められるのは、『被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付』、『被相続人の療養看護』、その他の方法により、『被相続人の財産の維持または増加』について特別の寄与をした場合に限られるとされています。

この寄与分に関しては、被相続人への介護を寄与分としてみることができるかが争われることが多々あります。家庭裁判所の裁判例では、介護のための費用を立て替えたり、介護のための実費を負担したりした場合には、被相続人の財産の減少を防止したとして寄与分としてみることは認めていますが、介護行為(労働)自体については、ヘルパーを使うかわりに相続人が介護した場合にヘルパー費用相当額を寄与分とすることしか認めていません。

 

・特別受益

特別受益とは、被相続人から、『遺贈、婚姻や養子縁組のための生前贈与、生計の資本としての生前贈与』を受けたことをいいます。

特別受益があった場合、「相続財産に特別受益に該当する贈与の価額を加算したもの」を相続財産とみなし、特別受益を受けた相続人の相続分からは、その贈与の価額分を差し引きます。いいかえると、相続財産を先にもらったものとして、遺産分割協議において先にもらった分を調整して相続分額を決めることになります。これも、寄与分と同様に当事者間の遺産分割協議で決める場合は、各人の相続分に織り込んで、特に特別受益を明示しない方法が通常です。

 

5.具体的な相続分、取得分額、および遺産分割方法の決定

法定相続分は相続割合を規定するだけですし、特別受益・寄与分も金銭的に調整をするだけで、実際に存在する個々の財産をどう分割するかについては規定していません。あくまで、遺産分割時における遺産の評価額をベースに各相続人の取得額を確定させることに留まります。

しかし、現実の遺産は簡単に金銭に換えられない財産の集合体であります。問題はそれを実際にどう分割するかです。誰がどの財産を実際に取得するかは話し合いによらざるを得ません。

遺産分割の方法としては、遺産そのものを分割する現物分割の他、代償分割換価分割共有分割があります。

代償分割

代償分割とは相続人の一部がその相続分額を超える財産を取得する代わりに、もらいすぎた分を他の相続人に対し金銭で支払いをします。たとえば、相続人中の誰かが不動産を取得する代わりに、他の相続人に代償金の支払いをするといった具合です。

換価分割

換価分割は相続財産を売却処分してその代金を分配します。

共有分割

共有分割とは、遺産そのものを各相続人の相続分に応じて共有取得することをいいます。

上記のうち、通常は、まず現物分割が可能かを検討します。それが難しい場合には代償分割を検討し、代償分割もできない場合に換価分割を検討します。遺産を共有のまま取得する共有分割は最後の手段だといえます。

 

6.遺産分割協議書の作成

相続人による、遺産分割についての話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、とくに決められた形式はありませんが、不備があると不動産の名義変更(相続登記)などの手続きが行えないこともありますから注意が必要です。

遺産分割協議書へは、相続人全員が署名し市区町村に登録してある実印で押印します。合わせて印鑑登録証明書も用意します。

 

7.不動産産名義変更・有価証券の名義変更手続き

作成した遺産分割協議書の内容にしたがって、預貯金の解約(払い戻し)、株式など有価証券の名義変更、不動産の名義変更(相続登記)などをおこないます。

銀行預金などの解約手続き、株式・投資信託などの名義変更手続き、生命保険の受領なども合わせて行います。ただし、金融機関への手続きは金融機関所定の用紙への署名押印が要求される場合が多いため、事前に金融機関に対して、遺産分割協議書で足りるのか所定の用紙への記載が必要なのかを確認しておくと二度手間にならないかと思います。

 

 


 

 

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