という相談を受けることがあります。
そのような場合、どう対応すれば良いのでしょうか?
公正証書遺言の場合
被相続人が公正証書遺言を作っていたのであれば、公証人役場に行けば遺言書の謄本をもらうことができます。
最寄り公証人役場に行って、戸籍を示して自分が法定相続人であることを証明すれば、公証人が全国の公証人役場のデーターベースから遺言書の有無を調査をしてくれます。そこで、公正証書遺言(平成元年以降に作成されたもの限ります)が作成されていれば、遺言書の謄本の交付してくれます(遠方の公証役場で作成・保管されている場合は取り寄せてくれます)。
そこで、まずは最寄りの公証役場へ確認に行くことになります。
必要書類
①遺言者本人が死亡したことを証明する書類
(除籍謄本・死亡診断書など)
②請求人が相続人・利害関係者であることを証明する書類
(戸籍謄本(1の除籍謄本に、請求人の名前が載っている場合は不要))
③身分証明書(パスポート・運転免許証・住民基本台帳カード)
費用
遺言書の検索 無料
遺言書の閲覧 200円
遺言書の謄本請求 ページ数×250円
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合
自筆証書遺言
自筆証書遺言の場合は、公証人等は関与しませんので公証役場で調査してもらっても、内容はもちろん、自筆証書遺言書があるかどうかも知ることはできません。
秘密証書遺言
秘密証書遺言の場合は、公証人が作成に関与しますが、あくまで秘密証書遺言を作成したという記録が残っているだけで、遺言書自体は公証役場では保管していません。
そのため、遺言書を作成した時期は確認はできても、遺言書の内容や現時点で遺言書がどうなっているのかは不明と言うことになります。
もっとも、自筆証書遺言、秘密証書遺言は「検認」という手続きを家庭裁判所で行うことが義務づけられていますので、内容の開示を求めるにあたっては、この「検認」を活用します。
不動産の相続登記や預金の払い戻しには、遺言書に検認を受けていることが求められますので、検認を得る必要があります。
検認手続きあり又はこれからする予定
遺言の検認手続を行う際には、検認手続の日時が家庭裁判所から法定相続人全員に対して事前に日時場所が通知されますので、検認手続に参加して遺言の内容を見ることができます。
そこで、遺言書を持っている人に対して「検認」を行うよう要求します。
また、すでに「検認」が行われており、検認手続に参加に参加していない場合には、検認手続きの行われた家庭裁判所(被相続人の死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所です)に検認済みの遺言書の写しを請求することができます。
そこで、家庭裁判所に遺言書の写しの交付を請求します。
では、検認手続きをしてくれない場合
検認をしろと要求しても相手が頑なに応じない場合もあります。
相続財産に自宅建物といった不動産が含まれている場合には検認がない遺言書では相続登記ができませんが、不動産を売ると言った事情でも無い限り相続登記をしないことによる不利益も余りありません。そのため、検認をしないまま、自分が相続したと言い張って不動産に居座ることもあります。
その場合の手段ですが、残念ながら、現行法上、遺言書開示請求権といったものは規定されておらず、強制的に開示させる手続きは存在しません。
したがって、現行法上、遺言書の開示を拒否する相続人に対して強制的に開示させることはできません。
他の相続人が開示しない場合の対応方法
開示の要求
遺言書を持っている人が、検認の申し立てをしなかったり、検認前にわざと遺言書の開封たりした場合には、5万円以下の過料に処せられることがあります。
そこで、再度、法律上の根拠を示して「検認」をするよう求めることになります。
検認手続きをしない場合はどうしたらよいのか?
遺言書を勝手に変更したり隠匿したりすると、法定相続人であっても相続ができなくなるとされます(民法891条5号)。
そこで、隠匿にあたるとして開示に応じるよう説得する方法があります。
それでも開示に応じない
方法としては2つです。
①遺産分割調停
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。
その調停の場で相続人が遺言書を示さない場合は、遺言書がないものとして法定相続分に従って遺産を分けることになります。
すなわち、遺言書の開示がなくても、少なくとも法定相続分については確保できることになります。
ただし、仮に遺言書が自分に有利な内容であった場合には、取り分が減ることになってしまうというデメリットもあります。
相続人でないことの確認訴訟
隠匿を理由として「被相続人の相続財産に相続権を有しないことの確認」を家庭裁判所に求めるものです。
もっとも、訴えた側が遺言書の隠匿を立証する必要があります。そして、隠匿の前提問題として、そもそも遺言書が存在すること、相続人が保管していることを立証する必要があります。さらに、隠匿した人に不当な目的があったという主観的事情の立証も必要です。
そのため、相続人が遺言書を保管していることを認めていればまだ認められる可能性はありますが、「遺言書はない!」と言い張っているような場合は、実際問題として、かなり困難な方法かと思います。